106号室
今年もアパートの中庭にあの花が咲いた。白い大きなラッパ状の、朝顔をベローンと長くしたような花だ。去年のある蒸し暑い夏の夜、俺は強烈な甘い薫りに目が覚めた。ベランダに出てみると、あの花が咲いていたんだ。どこかに月が出ていたのだろう、妙にしろっぽいあかりに照されてその見事な花がいくつも咲いていた。俺は蚊に刺されて猛烈に痒い脇腹をぼりぼり掻きながらその花のたたずまいにしばし見とれた。
最近知りあった中国人ウーさんにその花のことを話すと、それ多分ダチュラといいます、と教えてくれた。「夏の夜よい匂いがする大きなラッパみたいのお花でしょう、それだらきっとダチュラですよ。キ○ガイナスビといいまして昔にはそれ薬に使ってました。それから女の人を騙すときに」ウーさんによれば、ダチュラというその花はいわゆる向精神系の薬効があり麻酔などに使用されていたが、淫売宿で少女に客をとらせる際などに催淫剤としても用いられていたらしい。博識のウーさんは達者な日本語でぺらぺらとその花の歴史のことから漢方の薬草のことまでいろいろ教えてくれたが、俺はもうその花・・・ダチュラが女の子を朦朧とさせて云々のことしか考えていなかった。この花を使えば女の子は朦朧となっちゃって好き勝手できたりするのか・・・。俺の頭の中に一つの妙案が浮かんだ。
だから今年は花が咲くのがとても待ち遠しかった。俺は早速その花を咲いているだけ摘んだ。アパート中が寝静まった真夜中、バケツをもって庭に出た。吐き気がするほどの甘い匂いが満ちた中庭で、真っ白い大輪のその花は、俺に手折られることを拒むかのように可憐に震えた。俺は少し加虐的な気分になり、乱暴な動作で夢中で摘んでいった。すべて摘み終わり、ふとバケツの中を見るとさっきまで清楚に震えていたダチュラは、なぜか少し薄汚ない感じがした。
さて摘んでみたはいいがこの花を一体どうしたら女の子に服用させられるのだろうか。要するに飲ませたらいいんだろうから、取りあえず乾かしてお茶みたいにすりゃあいいだろう。友達が変なキノコを乾かして熱湯をさして飲んだらかなりキたって言ってたしな。それなら簡単、俺にもできる。俺はバケツ一杯の白いダチュラを丁寧に水洗いし、笊に並べて干すことにした。
一週間後、ダチュラは完璧に乾いた。あんなに瑞々しく真っ白でむっとするほど甘い匂いがしていたのに、今や干からびた婆さんみたいに薄茶色になり、かさかさ乾いた音をたてている。匂いも殆どしなくなった。かすかに青臭い、変な匂いがする。でも俺は、こいつは素晴らしい媚薬なんだと信じて疑わなかった。さて誰に飲ませようか。何せダチュラさえあればどんな女の子だって好き勝手させてくれるのだから。
そうだ、キヨミがいい。あいつは仲間内でも飛び抜けて美人だが生意気で、おまけに金持ちの妻子持ちと不倫しているらしい。少しくらい無茶しても何とかなるだろう。俺は美人のキヨミを朦朧とさせた後のことをあれこれ考えて一人ニヤニヤした。キヨミは一体どんな顔をするだろうか。
去年の夏、仲間内で朝まで遊んだとき、猛烈に酔っ払ってげーげー吐きながらキヨミは突然こう言ったんだ。「永遠が見たいの」。その時は俺もかなり酔ってたから軽く受け流した。だけどやたらその言葉が耳に残って離れない。永遠か。見せてやるよ。俺が、魔法の花で。
その夜、早速俺はキヨミに電話をかけた。面白いゲームを買ったとかいいレコードが手に入ったぜとか苦しい理由を並べて何とかキヨミを家に呼ぶ約束を取り付けた。キヨミはあまりやる気がなさそうだったがそんなことはお構いなしだ。外は雨だが俺の体の中では真夏の太陽がギラギラ輝いている。
次の日曜日、いよいよキヨミがやってくる。
103号室
今日も雨だ。ここ連日降り続いている雨は明日の夜半には今年何度目かの台風に変わるらしい。これでは明日もまた大好きな男のスポーツができない。ナオトは苛立った。
ナオトは大学でカバディをやっている。カバディを知っている人なんて一体どれくらいいるんだろう。ごつい男同士が手を繋いで「カバディカバディ」と叫びながら追いかけっこをする。まあ、陣取りゲームみたいなものだ。しかしナオトはカバディを、立派な男のスポーツだと思っている。誰よりも練習熱心だ。いつも遅くまで足腰の鍛練をするし、ひとりで発声練習を忘れない。おかげで靴下はいつも泥だらけだ。ナオトは男のくせに結構きれい好きだ。だから汚れた靴下はちゃんとハイターで漂白している。白い靴下がナオトの、男としてのステイタスだと思っている。当然毎日山のような洗濯物が出る。いちばん活躍している家電製品はもちろん全自動の洗濯機だ。チームいちリッチな洗濯機を持っているナオトは、必然的にチームのメンバー全員の靴下を洗うことも少なくない。だから雨はキライだ。
ナオトは舌打ちした。すると、隣を歩いていたサチコが不思議そうな顔でナオトを見上げた。「靴下、干しっぱなしなんだよ」ナオトがぶっきらぼうに言うと、サチコは何も答えず、興味無さそうに前を向いてしまった。
サチコはカバディ部のマネージャーだ。男所帯の紅一点。普通ならば部員の憧れと下心を一身に集めるはずのポジションにいるのに、サチコはだれにも見向きもされない。それはサチコが美しくないからだ。本人もそれをコンプレックスに思っているのだろう。必要以上にみんなに媚を売る。だから余計に相手にされない。もちろんナオトも相手にしていないのだが、どうしてだかサチコはナオトにだけは愛想がない。むしろサチコの方がナオトをバカにしているような具合だ。ナオトは不細工なサチコの横顔を見て、もう一度舌打ちをした。
今日は雨だったのでカバディは中止、ひとり部室で筋トレをしていたナオトが帰ろうとして部室を出たとき、ばったりサチコに出くわしたのだった。「ナオト君、遊ぼうか」珍しくサチコが声をかけてきたことに虚を突かれ、ナオトはうっかりいいよと答えてしまったのだ。
アパートの鍵を開けると部屋の中が湿っていた。サチコは遠慮もなく上がり込んできた。内心むっとしながらも、ナオトは勢いよくベランダに面したガラス戸を開ける。案の定、干しっぱなしの部員全員の靴下は雨に打たれて滴を垂らしていた。頭に来た。せっかく干した靴下が濡れてしまったことにではない。それは天気も気にせず洗濯をしたナオトも悪いのだから。ナオトが腹を立てたのは、自分の真っ白な靴下と一緒に、他の部員の、洗ってもとれない汚れた靴下が並んでいるからだ。何だか自分の靴下が泣いているように見えた。「だから他人の靴下はヤなんだよ」乱暴な動作で、彼は自分の靴下だけもう一度洗濯機に入れ、他の部員の靴下はハンガーに付けたまま部屋の中に持って入った。「サチコ、おまえも手伝えよ」タバコを吸っていたサチコは面倒くさそうに「何を」と言った。ナオトはますます腹が立ってきて、「靴下を絞るんだよ! おまえもやれって言ってんだ」と怒鳴った。サチコはしぶしぶやってきて、さも嫌そうに汚れの染み付いた靴下の一つをつまみあげた。滴が畳の床に数滴したたり落ちた。「男のひとって汚いのね。ナオト君、こんな汚い靴下洗っててイヤじゃないの? あたしは彼氏の靴下だって洗うのイヤ」と蔑むようにナオトを見た。
ナオトは突然妙な衝動に駆られて立ち上がった。持っていた数足の水の滴る靴下をサチコの顔に向けて思いきり投げ付けた。びちゃっと音がして汚い靴下はサチコの顔と胸を濡らした。「何すんの」不細工な顔をさらに不細工に歪ませて、頭に汚い靴下をのせたままサチコは怒鳴った。「酷い、こんな」憤って靴下を払いのけようとするのを制し、ナオトはサチコを濡れた靴下の散らばる床に押し倒した。どうしようもないくらい頭に来ていた。首の後ろがチリチリするくらいに。でも何に? とりあえず目の前のこのむかつく女を黙らせたい。ナオトは濡れたサチコの首筋に顔を押し付けた。雨の匂いがした。サチコは足をばたばた動かし、網戸を蹴倒した。
雨はさっきよりも強くなっていた。
207号室
これは参った。想像をはるかにこえる痛手だった。なんとヨアワしてしまった。
それはそれはわけの解らないほどこどくな気分だった。こんなことになるとは。ヨアワすることはこんなにひどいことなのだ。
しかしこうしてはいられない。ひとりでヨアワした痛みを抱えて悲壮なつらをしていても、世界はお構いなしに進んでいる。常々リアリストを自称していたのに、これは全くの不覚だった。生まれて初めて味わった胸の中空をどうすることも出来ず、のどの辺りに使える違和感をのみ込むことも出してみることも出来ないままに、取りあえずべんざの上に座ってみた。するとお尻の辺りから伝わってくる生暖かさがさらにきもち悪さを増し、尚更ふあんな気分になってきた。どうしたらいいのかしばらく思案した末に、その行為を中断し、このきもち悪さはきっと空腹から来ているのだと気付いたときには、既に陽は横を向いていた。然りとて家の中には食べられそうなものは何もない。窓からやたら風が吹き込んでくる。
仕方がないので何か買ってこようと思い、そとへ出た。妙に白っぽいひかりが生ぬるく満ちていて、川面に映るひるの影もなんだかもたもたしている。河原に並んで座っているカップルが何だか人形のようにかたかた動いている。胃の辺りがずきずきする。相当歩いた後に、一銭も持ってこなかったことに気付いた。なんということだ。どこかのまんがの人みたいだ。ひどくばからしくなったので、歩くのをやめていんちきヒーリング丸出しの芸術作品らしきいすに腰をかけた。
それで何がこんなに痛いのかと考え直すことにした。果たしてひとりで踊っていたのだ、と思い当たった。いいおもいでもたのしかったことも今はかなしい。そうだ、かなしい、だ。かなしいという気持ちを物理的な痛みで味わっているのだ。たくさん泣かせた。最悪な時間を通り過ぎ、あれ以上にはなれないだろう程に愛したつもりがどこをどう間違えたかこのざまだ。ばかみたいだ。ただのこどくなばかだ。そういえば「ヨアワ」って本当は何ていうことばだったろう。どうもことばというのはそれぞれちゃんとした意味があるらしくて、わかりやすさとか普遍性とかを考慮しなくてはいけないから難しい。ヨアワの意味はなんだったか思い出せないが、その出来事がいま頭の中に「ヨアワ」という音と形をもってリアルに在るので、それはヨアワでいいのだ。じりじりと暑くなってきた。川べりの夾竹桃の朱が血のいろみたいに滲んで見える。歩き疲れたし空腹で倒れそうだったので家に帰ることにした。
冷蔵庫の中をあたったら、確か2週間前に買った卵があった。戸棚の奥には去年のお中元のそうめんが隠れていた。もう面倒くさくなり、鮮度が悪くてもまさか死ぬ訳じゃあないだろうし、熱意もないのでそれらを食べることにした。調理の間じゅうへんな感覚があった。ぼんやりしているわけではないのに行動がどこか上滑りしていた。のうみそは必死で時間を遅らそうとしているのに、行動は物凄くせかせかしている。麺を沸騰した湯にばらばらといれる間も手指がやたら焦っていた。寝ぼけているときの感覚に似ているなあと思ったついでに、昨夜蚊にさされた足の付け根が無性に痒かったことも思いだした。ゆうべ。まさかこんな事になるとは思ってもいなかったさいごの夜だった。しばらく裸で眠ることもないのだろうか。それなら変なところを蚊にさされずにすむ。でももうあのつよくてしなやかで固くみずみずしいみどり色の熱帯の花のような夜はやってこないのだ。
やってこないのだ、こどく、かなしい、ふあん、そういったことをぺらぺらとくちにしてはいるが、おそらくまだ理解できてはいない。ことばにすることは決断することだ。しかしいま、ことばにした直後に肥大する痛みがそのことばを物凄いちからで否定する。それらのことばの意味を理解する作業がおそらくいちばん骨が折れるのだ。ならばもう少しこのままでいようか。ヨアワは人を詩人にするというが、そんなきもちの悪いことになるのはいやだなあ。こんなに不甲斐なく痛んでいることも相当いやだ。自分のことを棚にあげた物言いだが、どうしてこう世界は感傷的なのだろう。ただだくだくと生きていることは、果たしてそんなに無意味なことだろうか? そうは思わない。むしろ「意味」なんてお化けといっしょで、およそ普遍的なものでもなんでもない。個人の認識次第でくるくる様相が変わってしまうようなちんちくりんだ。常に自分をふこうな境遇に置くのも個人の認識のせいだ。かわいそうな自分ほど腹の立つものはない。
しろくすべすべとしたそうめんと卵のきいろがなんだかうそっぽくてぼそぼそしていた。ともかくも腹も充ちたのですこしは日常に戻ろうと思い、さてにちじょうせいかつとは果たしてどんな代物だったろうかと思い返して愕然となった。そういえばひとりでいるとき何をしていたろう。ヨアワするまでの決して短くはない間、毎日ちゃんと生活していたはずだ。それなのにまるで実感がない。むずかしいことしか語り合わなかった。互いを傷つけてもむずかしいことをむずかしいことばで投げ投げ返し、実は何もわかりあえないことにとうの昔に気付いていながらもそのむずかしい会話をやめようとしなかった。結局センチメンタルな感傷に紛らわして日々を過ごしていただけ、甘えた生活に酔っていただけだった。知らないうちによるになっていた。
少し動悸がする。窓から月の光が差し込んでいる。何をするでもなく立ち上がってベランダに出ようと歩きだしたら足の裏にひどい痛みが走った。みると裸足の足の裏に薄いみどり色のガラスの破片が突き刺さっていた。それをみた途端、「ヨアワ」の本当の意味を凄い勢いで思い出してしまった。今朝まだ暗いうちにした別れ話、泣いて怒ってあの人を力いっぱい突き飛ばしたときにあの人がかけていた眼鏡が壊れたんだった。あの人は頭を強く窓ガラスにぶつけて、頭から血を流しながら悲しい顔をして部屋を出ていった。あの人は・・・・・・どうしただろう。転瞬、猛烈に不安になり、ベランダに走り出た。外には当然のごとく、あの人はいなかった。かわりに、月あかりに白く照されたアパートの中庭で水色のバケツを持った変な男が下を向いてぼんやりと突っ立っていただけだった。
私は、けさ男を失った私は、今度こそ本当の孤独と不安がじわじわ込み上げてくるのを感じてベランダに座り込んだ。
106号室 君は永遠が見たいと言った。
どういうことだ。ダチュラはちっとも効かなかった。事態は最悪。いや、ちっとも効かなかったわけじゃない。キヨミは朦朧となったことはなったんだ。しかし朦朧となりすぎた。さっきまで彼女は完全グロッキーでトイレに閉じこもって吐いていたのだ。
午後、やって来たキヨミにまず俺はハーブティーだぜえ、といそいそとダチュラのお茶を出した。彼女は匂いを嗅ぎ、しかめっ面で「くさいよ」と言った。取りあえずここで怪しまれたら何もならないので、「肌にいいんだってさ、中国のお茶」と調子よく勧めた。キヨミは本当にまずそうな顔をしながらもコップ一杯全部飲んだ。
さてそこからだった。暫くするとキヨミは「うー、何か気分悪くなってきた」と言い出した。ばっちり予定通りだ。凄い効き目だぜ。俺は内心ほくそ笑みながらも「大丈夫? 横になってれば」とベッドを示した。彼女はきれいな顔を歪ませて「いい、大丈夫、ちょっと待って」と目を閉じた。俺はすっかり盛り上がってきて、彼女の肩を抱き、「おい」と引き寄せた、その時。キヨミはいきなり吐いた。
おいおいマジかよ、これって結構やばいんじゃ? 一瞬マジで引いた俺にはお構い無しで、キヨミは前かがみになって唸っている。痙攣するかのように震えている細いうなじがかなり色っぽい。しかしそんなことを言っている状況じゃないのだ。「キヨミ? どうした、大丈夫?」キヨミはまた口を押さえる。差し出したティッシュをひったくるように取り、かなり必死でこらえながらも彼女は、「あんた何、飲ませたの」と搾り出すような声で言った。「いや、だからハーブティー・・・」苦しい言い訳をしてはみたが、キヨミの充血した目は明らかに俺の嘘を見抜いている。俺はそれまでずっと彼女の冷たい肩に置いていた手を、恐る恐る放した。キヨミは「最低」と言い捨ててトイレに駆け込んだきり、暫く出てこなかった。
「気分悪い、最悪。帰る」やっとトイレから出てきたキヨミはそう弱々しく言うと、送るよと言う俺を無視して、縺れるような足取りで部屋を出ていった。俺は暫し放心した。キヨミに対して悪いことをしたとか可哀相だとかいう感情はまるで湧いてこなかった。訳もわからず、むかつくしガッカリするし、踏んだり蹴ったりな気分だ。暫くたってから足元のキヨミの吐瀉物に気付き、顔をしかめながらそれを掃除した。そして目まぐるしく逡巡した。
何でうまく行かなかったんだろう。作り方がまずかったのだろうか、それともウーさんが言っていたことは全くの嘘っぱちだったのだろうか。確かめる術はひとつしかない。俺もダチュラ茶を飲んでみること。でもそれは今となってはかなり勇気の要ることである。その薄い黄色の液体は今や魔法の薬ではなく、得体の知れない臭い代物でしかない。俺はすっかり脱力して窓を開け、呆けたように中庭に降り立った。
中庭には青白い月の光が昼のように明るく満ちていた。ダチュラはこの前の乱獲のためかひとつも見えなかった。かわりにいろんな雑草が生い茂り、まるでジャングルのように鬱蒼としていた。晩夏の庭は、俺の惨めな営みには全く無関心に、濃密な成長を遂げていた。どこからか虫の声もする。もう夏も終わりだ。ふと足元を見ると、つい数日前にダチュラを山盛りいっぱい摘んだ水色のバケツが転がっている。俺は何となくそれを手に取った。するとそのバケツの陰に、小さな白いダチュラの花が咲いていた。あの妖艶な美しさが幻だったかのようにその花は心もとなげに見えた。折から吹いてきたぬるい風にふと微かな甘い香りが漂ったとき、俺の中で初めてキヨミに対する罪悪感が生まれた。「永遠を見せてやる」なんてとんだお笑い草だ。俺は苦笑し、ひとつだけ咲いていたダチュラをぽきっと手折った。白い花は、キヨミの白いうなじのようにか細く震えた。
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